「エマニエルか?ヤマトか?(「鉄コン筋クリート」)

1977年、東京のとある映画館の前に長い行列が出来ていた。主に若い男性がメインで。映画好きの僕の父は「何を見る行列なんだろう?」と疑問に思い、正面口を見たら「さよならエマニエル夫人」の看板が目に入ったので、並んでいる若者の一人に「エマニエル見るのかい?」と尋ねたのだそうだ。
するとその若者は不機嫌そうに「違いますよ!ヤマトです、ヤマト!」と答えた。同じ劇場で「劇場版宇宙戦艦ヤマト」が上映されていたらしい。
当時の話をしながら父が言うには
「いい年をした男がヤマトなんか見てどうするんだ。エマニエルの方がよっぽどマシだ。ムキになって答えるなら『ヤマトなんか見ませんよ、エマニエルに決まってるじゃないですか!』と答えなきゃダメだ。」
と思ったのだそうだ。
アニメや漫画が「お子様ランチ」だった時代は去り、そのきっかけのきっかけがヤマトあたりだったのかもしれない。いたずらっぽく父に質問された若者の気持ちも分からないでもない。でもそれ以上に父に賛同すべき部分が僕には多い。
映画だけでなく、娯楽全般、さらにはギャンブルまで、昔は裏道で怪しげな中年男性だけが楽しんでいた「文化」が次第にソフト化、カジュアル化して大衆化していく。そして子供をフックにファミリーから金を巻き上げるコンテンツになっていく。父はそんなことを嘆いていたのだと思う。
子供を一人前の男にするための場が隅に追いやられ、いつまでも子供のままの連中が幅を聞かせて「ヤマトですよ!」と声を荒げる世の中は軽薄だ。

「鉄コン筋クリート」にも僕の父によく似た人物が現れる。
宝町に巣食うヤクザのひとり、鈴木。通称「ネズミ」。彼は宝町で人生を知り、大人になった、男になった。彼にとって宝町は大人の町だ。
その宝町が「再開発」の名のもとに子供たちから金を巻き上げる装置に変わろうとする。ネズミはそれに抵抗する。
無害で安全に見えて、子供でも安心して楽しめる場所。それは最も効率的且つ合法的にビジネスを成立させる装置だが、ただそれだけだ。そこには驚きも、発見も、刺激も、香りも、闇と光も、何も無い。
ネズミは無くなりゆく古き宝町と運命を共にする。

現実の世の中でも「再開発」の名のもとに次々と効率的に子供たちから金を巻き上げる町が幅を利かせるようになってきた。映画館はフードコートの隣のシネコンでファミリーがユニクロのショッピングバッグ片手にディズニーを見る場所に次々と取って代わられつつある。
それはそれで構わない。
でもやっぱり大人が、大人にだけ許される文化を排他的に楽しめる場所もしっかり残り続けて欲しいものだ。
当時の父の年齢を超えてしまった僕も既に二巡遅れくらいになっているのかしら?

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「エマニエルか?ヤマトか?(「鉄コン筋クリート」)” に対して1件のコメントがあります。

  1. ヤマ より:

    「でもそれ以上に父に賛同すべき部分が僕には多い。」同感です。
    『鉄コン筋クリート』もまたアニメーション作品ではありましたが(笑)。
    いくつのときに観たんだっけなぁ。

    1. sudara1120 より:

      ヤマさんなら「ヤマト」でなくて「エマニエル」を見て、たとえ映画が55点くらいでも、しっかりその映画を語り尽くしてくださったのではないかと思います。
      そうですよね?
      (^-^)

      1. ヤマ より:

        実は何と『エマニエル夫人』は、きちんと観てはいないのでした(たは)。
        でも、『続・エマニエル夫人』については、お見込み通り映画日誌も綴っております(笑)。
        http://www7b.biglobe.ne.jp/~magarinin/2013/18.htm

        1. sudara1120 より:

          エマニエル日誌、拝見いたしました(^.^)
          僕はヤマさんが官能系の映画について綴っている感想が結構好きだったりします。
          シルビア・クリステルって方は、中学生くらいだった僕にとっては、とにかく「ドキドキ」の対象だったのですが、改めて経歴とか、ヤマさんの日誌とかを拝見すると、とても存在感のある稀有な女優さんだったのですね。
          やっぱり、ヤマトよりエマニエルを見ておくべきでした(^.^)

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