誰でもが平等で、スクリーンのこちら側の僕たちとも地続きに平等で、だから深い共感を得ることが出来る。
そんな映画が好きだけど「勝手にふるえてろ」にそんなことは全く期待してなかった。エキセントリックな主人公に笑わせてもらって、びっくりさせてもらって、最後はちょっとホロリとさせて貰えばそれで満足だった。他人や出来事を観察する側に回るつもりだったのに、まさか自分がこんなにも彼女たちに引きずり出されるとは思っていなかった。
まさに「現実って急」で。
彼女が上手に距離を置いて、視野の端っこで見ていたはずの人々が、面と向かって彼女たちと話し始める。彼氏が、友人、が隣人が、最後にはあだ名でしか呼んだことのない上司までが彼女に優しい言葉をかけてくれる。
「二」はきっと一人暮らしの家で絶叫しながらきっとヨシカのことを妄想してたんだろうし、来留美はちょっと前までヨシカと同じように恋する女子を観察してたのだろうし、お隣さんだって、あの彼に出会うまではきっと・・・
ひょっとすると絶滅した動物だって・・・
そうすると、もういけない。
そこには自分もいる。
一人きりの妄想に一喜一憂して、振り回されて、それでも誰かと繋がりたくて、誰かを恋しくてたまらない自分が。妄想して妄想して妄想し過ぎて絶滅してしまう程に不器用な自分が。
まさかまさかの怒涛の展開に、当初の目論見は見事に裏切られ、思わぬところで至高の群像劇体験をさせてもらうことになりました。