東京との南の端っこの、その南の端っこに住んでいる。都知事選挙が近い。
ケン・ローチはイギリスの映画監督。筋金入りの社会主義者で常に”システム”を支え、システムから搾取され、最後には切り捨てられる人々の視点に立って作品を世に送り出し続ける。戦う人。
キェシロフスキはポーランドの映画監督。初期はドキュメンタリーを中心にケン・ローチ同様、政治を扱う作品を撮っていたが、次第に”個人”に視点を移し、それをドキュメンタリーのような冷徹な視線と、どこまでも温かい”自身という個人”の視線の、常に両方で追い続けた。今は天国から僕たちを見ている。
「ケン・ローチのためなら喜んでコーヒーを淹れる係になる」と言ったのがキェシロフスキ。
政治的信条を表明することを回避しないケン・ローチと政治自体を否定して次第にそれを作品の中で表現することをしなくなっていったキェシロフスキ。
その二人がお互いを最大の敬意を持って認め合っている。認め合っていた。
支持率アンケート、ゴシップ記事、見栄えだけは良いスローガン・・・
僕は今のこの国の、黒か白かをハッキリさせないと収まりがつかない幼稚さに辟易としている。お互いの立場を尊重し合って認め合えることが、せめて映画の世界には残り続けて欲しい。