→『フォースの覚醒』 J.J.エイブラムスの”復旧作業”
そんな惰性で続くだけのシリーズになりかけていた『スター・ウォーズ』に、唐突に”新たな希望”とも言える人物が登場して来ます。
ライアン・ジョンソン。USCを出てインディペンデント映画で認められ、中規模の映画2本とTVのエピソード数本を撮っただけの、経歴的にはさほどぱっとしない人物です。(同時にその経歴は、1977年当時のジョージ・ルーカスと奇妙に近似しています。)
どういった経緯で彼がルーカスフィルムの脚本チームに取り込まれたのかは不明ですが、結局彼が次回作を監督し、脚本の大半も自分で書くと決まった時、私はひそかに快哉を叫んでいました。

彼がスター・ウォーズに関わる前に撮ったSF映画『ルーパー』は、手垢のつきかけたタイムパラドックスものを独特の映像スタイルと強烈なテンションで一気呵成に描き抜いた傑作でした。あの映画はSFアクションとして優れていたのみならず、SF映画にありがちな世界設定ガイドに終始することなく、特異な世界の中で足掻く人々を徹底的に掘り下げて描き出す事に成功していました。
彼の持つひとつのアイディアを極限まで突き詰める姿勢、それを登場人物に反映させ物語の推進力とする話術、練り上げた物語を印象的かつ独創的な一枚絵として纏め上げる描写力、いずれも近年の『スター・ウォーズ』には見つけられなかったものでした。
彼であれば、既定路線の透けて見えるシリーズを一段高い所に引き上げてくれるのではないか。漏れ聞こえてくる製作中のニュース(「ジョンソン参加前に半ば出来上がりかけていた脚本を全部捨てた」「仕上がった脚本をエイブラムスが読んで悔しがった」「マーク・ハミルが自分の役に文句をつけている(笑)」等々)を聞くにつれ、更に期待は高まります。
→『最後のジェダイ』 ジョンソンによる”建て直し”の試み