→『最後のジェダイ』 ルーク・スカイウォーカー
そうした物語の深みに釣り合う様に、映像もシリーズ最高の絢爛さを見せてくれます。ジョンソン監督は以前インタビューで「物語がヘビーなので、その分映像面では楽しさを重視した」と語っていましたが、確かに場面ごとの映像的カタルシスはどれも秀逸。序盤の敵味方の軽妙なやりとりから重爆撃機の攻防に至るサスペンス、カント=バイトのカジノに見られる「如何にも」な楽しさと、そこが異星の競走馬達のスタンピードで滅茶苦茶にされていく場面の疾走感。クレイトの圧倒的スケールの断崖絶壁と、横一列に勢揃いしたウォーカーに挟まれた豆粒の様なルークの姿など、楽しさを通り越してどれも圧倒的な美しさを伴って観客に迫ります。白眉はやはり、ファーストオーダーの旗艦がレジスタンス旗艦のまさかの特攻により寸断される場面でしょう。無音の中、目も眩む閃光の白とごく僅かな影のみだけで描かれるあの一瞬は、シーンの悲壮さとも相まってあまりにも場違いな美しさを醸し出していました。
スターウォーズ世界では「悪」のモチーフカラーである赤色を随所に配した色彩設計も見事です。ジョンソン監督は赤色の配分を敵味方の趨勢を測る指標としても使っている事に後になって気付きました。白一色だったクレイトの地表がファーストオーダーの侵攻につれ赤く”傷つけられて”行き、跳ね散らされる赤い地表はまるで血を流した様な印象を観客に与えます。スノーク殺害直後の”玉座の間”では、束の間共闘するレイとカイロ=レンが側近達と闘う中、周囲を取り巻いていた真っ赤な緞帳に火がつき徐々に焼け落ちていき、闘いの終焉と共に無機質な支柱の外側に宇宙空間の広がる、『ジェダイの帰還』の”玉座の間”とそっくりな空間になっている、という仕掛けがされていました。(そしてどちらの映画でも、主人公はその舞台上で最終的な「悪の誘惑」を受けそれを跳ね除けてみせるのです。)
ジョンソン監督は物語進行に沿う形で、巧みに映像の色彩設計を行い、スターウォーズ銀河の多種多様な世界を物語に合わせて配置して見せてくれました。
→結び