雨あがる

仕官の望みがなくなり宿を去る浪人夫婦。夜鷹の女は「何かお礼をしなくては!」
「是非何かお礼がしたい。」そう思ったのでしょう。彼女がこんな風に人に感謝する気持ちになったのは久し振りのこと。一生懸命考えて、考えて、旅支度をする夫婦に精一杯の感謝の気持ちを込めて、薬を渡したのでしょう。

「つまらないもんだけど・・・」

この映画の主人公は名もなく貧しい市井の人々達です。

心優しき浪人とその妻も市井に交わってこそ、主人公に相応しい。自分の身の上を殿様に語って聞かせる伊兵衛には、名も知らぬ人々と肩を寄せ合って生きていく身の上を心から楽しんでいる様子が見えてきます。

どこまでも寛容でいつも包み込むような暖かさと優しさで夫を支える妻おたよ。
彼女の柔和な笑顔。そして侍二人にきっぱりと言った台詞が忘れられません。

「大切なことは何をしたかではなくて何の為にしたのかということではございませんか。」

あまりにストレートなこの台詞。しかし文字通りの“黒澤ファミリー”が力を合わせ、故人の遺志を継いだ一度限りの作品としてはもっともは相応しい。
市井の人々を描き、市井の人々の為の娯楽作品に徹したからこそ彼は世界中の人々に愛されたのでしょう。

映画館を出ると・・・
いつのまにか日が長くなり、まだ明るい外の景色を見て・・・

やはり「晴れ晴れとした気持ち」にならないではいられませんでした。
00/02/13(日) 21:16

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雨あがる” に対して2件のコメントがあります。

  1. このあいだ久しぶりに会った地元の同級生 より:

    とっても気持ちの良い映画でした。

    1. sudara1120 より:

      だよね。
      「映画を見終えた人が晴れ晴れとした気持になるように」
      というメッセージと共に黒澤明が残した遺稿が原案らしいね。
      まさにそういう映画でした。

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