贈る言葉(「SOMEWHERE」「キングス&クィーン」)
娘たちが大きくなって少しずつ彼女たち自身の世界が広がってきた。知らない言葉、知らない遊び、知らない友達・・・。これから少しずつ彼女たちと共有出来る体験、時間は減っていく。
それでも彼女たちが成長して、例えばハイティーンになった頃、悩む彼女たちに対して何か力になる言葉なり行動なりを送れたらいいなぁと思っている。
「SOMEWHERE」の父娘は、多分それほど長い時間を一緒に過ごしていない。だけども、それだからこそ、二人は友達同士のような親密な時間を共有する。それは奇跡と言っていいくらいの甘く豊かな時間だ。
早く大人になるしかなかった娘と、独りぼっちで何もかもを背負うしかなかった父。二人は空っぽの自分を持て余しながら、その「虚ろ」を分かり合う、分かち合う。
父親らしいことを何一つしてこなかった父はそれでも空っぽで孤独なひとりの男として、そういう父として精一杯の言葉を娘に送る。だからこそ彼女にはそれが届く、彼女の中のとても柔らかいものを温めることが出来る。そう思いたい。
デプレシャンの「キングス&クィーン」の血の繋がらない父と子の関係もいい。
決して立派な大人ではない父は、ある一時期、再婚した妻の連れ子として同居をしていた(そして今は別居してる)少年に対して、こんな言葉を送る。
前にも言ったけど、人生で僕が自慢するのは君に会ったことだ。
君が最低の男になったり1279年会わなくても君を想ってる。それが楽しい。
君は子供だから僕のことを考えなくてもいい。でも頼ってこい。
一つだけ言っておく。自分はいつも正しいと信じること。でも当然少しは間違うこともある。間違えるのはとてもいいことだ。
必ず答えがあるわけじゃない。思う以上に刺激的で意外なのが人生なんだから。
大人になれなかった自分を恥じて口をつぐむのか、それともそんな自分を棚に上げてでも精一杯の言葉を贈るのか。
僕の中ではその答えはもう決まっている。