ドニー・ダーコ

この映画は時間を遡る映画。遡ることを楽しめる映画です。

28日と6時間42分12秒

謎解きの楽しさ、ラスト数分間で一気に収斂する伏線の数々を反芻するなら、これくらい遡ればよいのですが、僕はもっともっと時計の針を戻すことにしました。

14年前、1988年

パパ・ブッシュとデュカキスの選挙戦が盛り上がっていたかどうかは記憶にありませんが、その年、僕は18歳で、この映画の主人公とほぼ同じ年でした。
海を隔てたアメリカで、あの頃僕たちが抱えていたのと同じものを彼らの中に見ることが出来ました。
あの頃、僕たちがいたのは「なんだか分からない世界」で、それも「なんだか分からない明るい世界」ではなくて「なんだか分からない暗い世界」でした、どちらかと言うと。

体制に流されるのはイヤで、いつもそういう反感を抱えていて、自説をまことしやかに押し付けようとする大人には徹底的に反抗をしていました。でもそれは頭の中で。ドニーが仲間たちの前で、キッパリという言葉

「人間はもっと複雑で2つになんか分けられない。」

僕も何度も想像しました。マイクを握って大人を相手に「それは違う!」って主張する自分を。

転校生の女の子、悩みを抱えていて、守ってくれる人、傍にいてくれる人を必要としていて・・・。途中を省略して、いきなり惹かれあって付き合い始めるような関係は、客観的に見れば「今の若者らしい」恋愛観の投影なのでしょうが、これだって14年遡れば、四六時中頭の中にあった、想像の一つです。

「もう一度人生をやり直すとしたら、どれくらいまで遡りたいですか?」

という質問の答えは「今の人生にどれくらい満足しているか?」の現われだという話は、あまりに分かりやすいので、かえって本当かどうか疑いたくもなりますが・・・。
それが「何だか分からない暗い世界」だとしても、僕も出来ればそのあたりまで遡りたいと答えるかもしれません。

何だか分からない暗い(これは文字通りの意味で)世界観を漂わせる映像や音楽はとても雰囲気があって、とても20代の監督とは思えませんでした。これからが楽しみです。
2曲ほど、ティアーズ・フォー・フィアーズの曲を使っていました。翌日、会社の帰りに彼らの昔のCDを二枚購入。少し恥ずかしいのですが、あの頃彼等は僕等のアイドルだったのでした。
02/09/02(月) 00:43

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ドニー・ダーコ” に対して1件のコメントがあります。

  1. このあいだ久しぶりに会った地元の同級生 より:

    あんまり覚えてないけど、面白かった気がする。
    割とこの手の映画ってあるけど、パラドックスも感じなかったような。

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