のぼる小寺さん
人の心を元気にすることが出来る人。
リアル小猿よろしく校舎をスルスルとよじ登り、風船を手渡ししてあげる小寺さん。
静かで爽やかで鮮烈な、夏の青空と白い雲のような、何度でも見たくなるシーンでした。
中学の頃、僕も卓球部で、校舎の三階か四階の部室の廊下で練習をしていると、中庭を挟んだ向かい側の音楽室がよく見えて、毎日黙々と反復練習をしているパーカッションの女の子のことをジーっと見ていました。背が高くてとても綺麗な子でした。
あの頃は、ただ見るばかりで、思うばかりで、誰かが自分を見てくれている、誰かが自分を元気にしてくれているなんてことは思いも寄りませんでした。
それは青さや未熟さでは無くて・・・、それはただひたすらに見返りなど求めず誰かを思い続けることの出来る成熟、達観なのかもしれません。
古厩監督の描く青春には、いつもそういう大人びたプラトニックが説得力を持って存在しています。
夏休みの間だけ突然隣の家に引っ越してきたあの子のことをただ見ていたあの窓とか。
時折映し出される夏の青空と白い雲、それから蝉の声。
彼は、夏休みに劇場で見るのが最も正しい「夏休み映画」の第一人者なのであります。