ザ・エージェント
カッコよさの定義は時代に応じて変わっていくし、自分の中でも変わっていく。
トム・クルーズは最初からカッコ良かったけど、当時と今では僕の中でのその中身は変化してきた。
この映画の中の彼で言うと(これは多分公開当時から)、前半の口八丁手八丁の彼よりも、後半のひどく不器用な彼の方がカッコいい。そして公開から24年(!)も経った今になると改めて弱い自分を曝け出すことの出来る彼がカッコよく見えてくる。
どんなビジネスにもエージェントとクライアントの関係はあるけれど、両者が対等である場合は少なく、お互いが高め合える関係というともっと少ない。でも、今、ビジネスの世界でも間違いなくそういうことを求める潮流は強まってきていて、ある意味オプティミスティック過ぎるかもしれない起業家やブランドが次々世に生まれている。
トム・クルーズのカッコよさや、キャメロン・クロウの青臭さはそういう意味で時代の先を行っていたのではないだろうか。どんな時でも時代を切り開くのは懸命なペシミストではなく、勇敢な夢想家だ。
当時20代(!)中盤だった僕は50になった。仕事でも夫婦でも家族でも、自分の弱さを受け入れて、それを分かち合えたときにだけ生まれる新しい関係がある。これから本当の家族になっていくだろうエージェントの一家も、強い意志で繋がっているアスリートの一家も、そのどちらもが愛しくて眩しい。本当にいい家族だ。
狂言回し役の「伝説のエージェント」の含蓄のある言葉も実にいい。
「ハートがなければ、気持ちがなければ、何を考えても意味が無い」
彼もまた、人間としての弱みに向き合い家族を愛する一人の男だ。
そして、メガネっ子の子役の彼の可愛さは言わずもがなだけど、何と行ってもレニー・ゼルウィガーが猛烈に可愛い。不器用で真っ直ぐで自身が無くて、だけど温かくて優しい。彼女のぽってりした唇には何度でも恋が出来る。
ということだけは是非とも付け加えておきたい。