シェフとギャルソン、リストランテの夜

原題がシンプルに「Big Night」だと聞いてしまうと、身も蓋もない邦題と言わざるをえないのですが、シェフとギャルソンという微妙な関係にある兄弟の絡みが物語の中心であるということはよくわかります。

知能が異様に発達した火星人の脳味噌のようなティンパーノ。一発逆転を狙った豪華なディナーを象徴するに相応しい見事な料理でした。素朴で暖かいイタリア音楽と表情豊かな俳優陣の力を借りて、美味しさを演出するのは、まさに映画の独壇場という雰囲気でした。

でも、この映画の最も映画らしいシーンは厨房でのラストシーンです。

何も言わず見事な手つきで、本当に見事な手つきでオムレツをつくるセコンド。
3人分作ってそっと兄の分を残しておく。それとほぼ同時に帰宅する兄。
「お帰り。」も「ただいま。」も言わず、オムレツとパンをさし出す弟。部屋を出ていく見習いコック。やがて黙って肩を抱き合う兄弟。

絶妙のタイミングと無駄のない動き。無言の長回しの中に、この映画の魅力がぎゅっと詰まっていました。時に反目しながら、これからも共に人生を歩むであろう兄弟の絆を感じさせる「Small Morning」でした。

彼方此方でレシピを見かけたティンパーノではなくて、美味しいオムレツの作り方と食べ方を教えて欲しくなりました。
97/06/12(木) 21:17

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