親愛なる日記
最近、自分の日記を公開する人が増えていると聞きますが、僕はまだ見た事がありません。でも日記を書くという行為はそれを公開するにしても、しないにしてもどんどん内側にこもっていくというより、むしろ外界との関わりを意識したものであるような気がします。本当に内側にこもるだけなら、それを書き留めることもしないのでは・・・。
この日記にもナンニ・モレッティというサングラスを取るととても優しい目をした映画監督の一見矛盾しているとも見える色々な想いが込められています。
「人間を信じていないわけではないんだ。多数派を信じられないだけだ。」
気ままに一人でバイクを走らせながら、彼は街を行く人々に話し掛けます。本当は日記に話し掛けているだけなのかもしれませんが。ベンツに乗った男も、いけ好かない映画評論家も、ジェニファー・ビールスも、からかったり、説教したり、悪態をついて見せたりしますが、一人一人はやっぱり嫌いではないのです。
どんな人の、何も起こらない一日でもちゃーんと映画になる。モレッティの映画への拘りを感じます。彼は決して楽観主義者ではありませんが、それでもやっぱり人間が好きで、映画が好きでしょうがない人なのだと僕は感じました。
医者は信用できないと言いながら、それでも一杯の水の美味しさに、この上ない喜びを感じてしまう。感じることが出来る。
彼や彼の愛する人はそういう人なのです。
97/08/15(金) 01:31