ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ

最初からそこにあったわけではないのに、何かを失ったような気持ちになって、だからその喪失感を埋めるのに、何を探していいのか、どこを探せばよいのかわからない。そんな人々の胸にキューバの伝説のミュージシャン達の奏でる「奇跡の音楽」は力強く響きます。

ニューヨークの街に感激して子供のようにはしゃぐ愛しき老ミュージシャン達。彼らは自分たちがその街にとっても「失われてしまったもの」であるということ
に気がついていたでしょうか?初めて足を踏み入れたその街でも彼らの音楽はずっと前にそこにあったもののように懐かしく響いていたということを。
彼らはそんなこと、きっと思いもしないでしょう。彼らは単なる「探される人」ではなくて、彼ら自身「探す人」であるから。ニューヨークもアムステルダムも彼らにとっては昔からそこにいたように懐かしい場所であったのではないかと僕には感じられました。
ロードムーヴィーが何かを探す旅なのだとしたら、それは「探す人」と「探される人」との関係だけでは決して成立しないのではないでしょうか。何かを探している人同士がコミットして初めてそこに音楽や映画が奇跡のように美しく立ち現れる。老ミュージシャンたちもきっと何かを探しつづけていたように見えました。
カーネギーホールの満員の聴衆を万感の思いで見渡すキューバの“ナット・キング・コール”。それはただ、求められてそこに立つ人ではなく、自らが求めつづけていた場所にいる人の姿であったはずです。

それにしても、どんな人生を送ったらあんなにすばらしい顔になれるのでしょうか。演技なしでも十分に役者でした。
00/06/25(日) 23:32

Follow me!

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ” に対して1件のコメントがあります。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です