2019年を振り返って(「アマンダと僕」)
ベスト10とか選べるほど見られなかったので1本だけ。
今年は、いや今年も、暴力が世界を席巻した。戦争があって、貧困があって、差別があって、憎しみがあって、詐欺や理不尽があって、出鱈目な奴が軽薄な笑いを浮かべて、誠実な人を見下して搾取して。
そんな暴力に対抗するための暴力、あるいはそんな暴力自体を肯定する映画が、また持て囃されたりした。絶賛されて、共感された。でも僕は見なかった。
僕は「アマンダと僕」を挙げたい。
不条理な暴力を前に悩み、悲しみ、逡巡しながら、不器用な優しさと愛で支え合う人たち。その愚かさや、その温かさこそを僕は愛したい。
傲慢な為政者や、軽薄な扇動家や、悪辣な詐欺師を非難するのではなく、大切な人のことを一番に思い、日々の生活を積み重ねられる人こそが本当に強い。
そう信じたい。