ギター弾きの恋
「今日は俺の誕生日だ。特別に許してやる。」
彼にとって、最大級の感謝の言葉でした。本当に嬉しかったんだろうなぁ・・・
不器用な二人が同時にスクリーンに映るだけで、僕は涙が出そうになって仕方がありませんでした。軽やかで美しいエメットのギターが切なく聞こえてどうしようもなかった。
誰かを恋しいと思ったとき、
何も喋らない相手に一生懸命自分の気持を伝えようと語りかけます。それがどんなに一方通行で彼女に伝わらなくても、彼女の気持ちが分からなくても、ずっと語りかけ続けます。それは「もう一人の自分」と向かい合う作業でもあります。
エメットにとっては他人に感情を伝える唯一の手段が音楽でした。だから彼は音楽を失うことを何よりも恐れた。安定した生活や家庭を手に入れることで音楽を失ってしまったら彼にとっては自分を表現する手段はなくなってしまうのです。でもやっぱり手段は問題ではなかった。音楽も言葉も、どんな方法でも本当に大切な人にはその気持はいつも伝わらないものだから。
切なくて悲しいラストシーン。たった一つの表現手段だったギターを打ち壊し、姿を消してしまうエメット。でもこんな見方は出来ないでしょうか?
彼は器用に自分の気持を表現できる音楽ではなくて恋を選んだのだと。誰の心も虜にすることの出来るギターではなくて、いつも自分の思いが伝わらない不器用な恋を選んだのだと。
どこまでも明るく、そして切ないギターの音色を思い出しながら、僕はそんなハッピーエンドを考えていました。
01/07/05(木) 21:25