パトリス・ルコントの大喝采
何でもありの大衆演劇ブールバール劇の魅力そのままに、のびのびと楽しく演じきった3人の素敵なおじさま達が何ともいえない味を出している快作でした。
恥ずかしながら、ルコント作品を見たのはこれが初めて。官能的な大人の作品を撮り続けてる方だと思っていたのですが、今作品の公開前に彼の初期の頃の作品も話題になり、実はアクションからコメディまで幅広い作風を持った方だと知りました。この映画にもそういう様々なジャンルのエッセンスがぎゅっと詰まっていて、映画らしい映画の面白さを楽しめました。
やはり一番好きなシーンは3人が自信を無くしかけたジュリエットを川のほとりで励ますシーンです。ヴィアラは言います。「いつまでも舞台にしがみつかなきゃ駄目だ。私はいつまでもしがみつくぞ。」才能やチャンスに恵まれなくても本当に舞台が好きな彼らの気持ちが彼女にも、そして僕たち観客にも伝わります。
ひょっとすると、彼ら役者同様あのブールバール劇の魅力の虜になって、いつまでも観客席にしがみついている人々があそこには沢山いるのかもしれません。
フランスという国は演劇や映画の需要曲線と供給曲線が日本よりはずっとずっと高いところで折り合っている国なんでしょう。観客の乗りの良さには脱帽です。この映画を見終わった後ル・シネマの満員の観客席が大喝采になるようならたいした物なんですが。(実際は半分足らずの入りでした。)
96/08/24(土) 21:21