青春全部賭けて(「ちはやふる」)
三部作を通して最も好きなシーンの一つが夜の神社での太一にかける原田先生の言葉。厳しくも温かく、そして途轍もなく重みのある言葉。
「青春全部賭けても勝てない・・・・?」
「賭けてから言いなさい。」
そして、というか、ところが、「結び」では、太一が、原田先生のその言葉を受け止め愚直に3年間それを実践してきたのだということが明らかになる。
青春の全てを賭けて、しかも「好き」や「楽しい」ではなく「誰かのため」に頑張り、その上に仲間たちに勇気を与え導いていくことにも心血を注ぐ。
三部作の最後に彼にスポットライトを当て、その上に彼がコツコツと、ただ只管に積み重ねてきた三年間の青春を昇華させる。これだけの素材が揃えば他にもいくらでも料理のしようはあっただろうに、敢えてそれを選んだのは、見事だと思う。
上白石萌音演じる、奏ちゃんは、声を聞きながら「君の名は」の三葉が頭に浮かんで、本当に上手な子だなぁと感心していたのだけど「結び」でも彼女が語る百人一首の世界観がこの映画に深みと奥行きを与えてくれていた。
三部作のオープニングにあたる「ドアノブの無い扉」のエピソードまでが最後の最後に効いてくる心憎い演出にも嬉しくなった。
上の句、下の句、一挙鑑賞を今まで何度も繰り返してきたけど、結びも加えた三部作一挙鑑賞も楽しみになってきた。