等しい重さ(「ちはやふる 結び」)

全ての青春には、全ての人生には、積み重ねた時間には、一人の例外も一つの例外も無く同じ価値がある。
それが三部作を通して貫かれているメッセージ。
誰か一人を主人公として見返してみると、それがよく分かる。
たとえば「机くん」こと駒野勉。
参考書とキャリーバッグと机だけが友達だった彼の成長。
最後の東京予選。3校が並んだ2位争いの決着は、最初の予選で「数合わせ」の屈辱に耐え切れずその場を去ろうとした机くんの奮闘に委ねられていた。その瞬間の彼の表情は見えないけれど、それを想像するだけで胸が熱くなる。
映画の中盤あたり、千早と奏が屋上から見下ろす放課後の教室では机君がクラスメイトのために勉強のアドバイスをしている。いつも一人ぼっちで机に向かっていた彼が、だ。
そして運命の決勝戦。一人だけ敗退し、仲間たちに深々とお辞儀をするのも彼だ。3年間彼が積み重ねてきたものの重さを知る仲間たちが彼に声をかける。勝利の歓喜のその前に、彼は深々と、堂々と仲間たちに礼をする。それは彼にしか出来ないことだ。
彼だけではない。そしてメインキャストだけではなく映画の中の全ての若者たちまで、一人の例外も無く全員に等しく流れる時間と、賭けて積み重ねたものを感じることが出来る。
とても誠実な作品だと思う。

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