世界を見るために(「LIFE!」)

『世界を見よ。危険に立ち向かえ。壁の裏側を見よ。もっと近づいて、お互いを知れ。それが人生の目的なのだから。』

雑誌「LIFE」の社訓は今でも生きているのか?それとも検索やSNSやストリーミングがあればタブレットから世界を見ることが出来るのか?

ベン・スティーラーの「LIFE!」を再見した。

無駄や非効率が削ぎ落とされ世の中はドンドン便利になる。効率的になる。速くなる。「10年後には無くなる仕事」が毎日のように話題になり、その仕事に従事している人はそれだけでプライドを傷つけられる。そこにはリスペクトの欠片も無い。
以前、米国在住のコンサルタントの方に質問をしたことがある。
「ITが人から職を奪う、が、日本の論調だけど米国ではどうなのか?」と。
その方はこう答えてくれた。
「米国ではそういう考え方は主流ではありません。ITの助けを得て人間はより高度な仕事をするようになる、もっと別の可能性を追求するようになると考えています。」
この違いはとてつもなく大きい。
効率や利益の隅に個人が追いやられて、個人が責任だけを負い、自分で自分を縛り袋小路に入っていく。そんな人を沢山知っている。この国では、そんな人が増えているという実感がある。
ITが人から仕事を奪うのではなく、世界への無関心と他人への不寛容が人を縛って傷つける。

数日前、自身の職を軽蔑され、それに空想で対抗するしかなかった主人公ウォルター・ミティは、ラストには自らの可能性を大きく広げて無限の自由と、無数の選択肢を手に入れることになる。
彼は言う。「嫌な奴になるな。」。全てのプロフェッショナルをリスペクトすることが僕らの出発点なのだと。そして長年に渡り彼と支え合ってきたもう一人のプロフェッショナル、写真家ショーンは一枚の写真で彼への最大のリスペクトを高らかに宣言する。
世界を見るために必要なのは最新のテクノロジーではなく、マッチョな肉体でもなく、自分と他人に対してのリスペクトと心の自由だ。

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