アマンダと僕

久し振りに街で再会した友人。姉の死を知らない友人と差し障りの無い会話をして別れを告げてから、ダヴィッドは思い直して友人を追い、悲しい別れのことを告げる。抱擁する二人。


彼には父親になれるための強さと優しさが備わっている。
それは己の弱さを受け入れて、打ち明けることの出来る強さ。
ある日突然、大切な人や、日常を奪われたとき、彼は虚勢を張るのでもなく、殻に閉じこもるのでもなく、真摯に大切な人たちと向かい合い、自分の寂しさや不安を打ち明ける。そして彼らの力を借りて、彼らに力を貸して、一緒に前に向かって進んで行く力を得ていく。
傷つき殻にこもろうとする恋人に対しても彼は自分の強さではなく弱さや不安や悲しさを隠すことなく打ち明けて、そしてお互いに支え合える関係を、温め合える関係を築いていこうとする。
これからの父親に必要な強さは独裁者のようなそれではなく、こういうしなやかな、柔らかな強さだ。


誰かの弱さや悲しみや寂しさを強さに変えることの出来る人の繋がり。そういうものの大切さを強く感じる。フランスという国の強さを感じる。


パリで英語を教えていた娘と、ロンドンでフランス語を教えている母親。一緒に暮らすことは無くとも、繋がっている、支え合っている。
3年前に他界した父親とダヴィッドも繋がっているのではないかと、これは僕の想像。父子家庭を営み子供たちを一人前にする過程で彼が発揮したのは決して独裁者のような強さではなかったのではないかと。

「エルビスは建物を出てしまった。」
母が教えてくれた英語の慣用句。英語は堪能ではない叔父。英国人の祖母。
涙ぐむアマンダを、叔父が、祖母が、そして天国に逝ってしまった母が、それぞれに別々の形で支えてくれる。そしてその強さはしっかりと彼女に受け継がれていく。
だからきっと大丈夫。

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