女性の自立を描くなら(「エンジェル・アット・マイ・テーブル」「ある貴婦人の肖像」「日蔭のふたり」)
女性の一生、女性の自立をテーマにした作品は出来れば女性自身の手による物であって欲しい。
不意にジェーン・カンピオンの「エンジェル・アット・マイ・テーブル」を思い出した。
この映画を薦めてくれたのは確かオフ会で出会った女の子だった。
「ピアノレッスン」のことを話題にしたときに「カンピオンだったら、エンジェル・アット・マイ・テーブルもいいよ。」と、そんな文脈だったように記憶している。
カンピオンは女性の自立をテーマにした作品を送り出し続けている。
「ピアノレッスン」はまさにそういう映画だったし「ある貴婦人の肖像」もそうだった。興行的にも評価としてもあまり芳しくなかった「ある貴婦人の肖像」も僕は割と好きで、歴史や慣習の頚木から解き放たれて自分の人生を選択する強い女性の意志の話だと解釈していた。それを女性監督が送り出しているのはとても健全なことだと思っていた。
同じ頃、ウィンターボトムの「日蔭の二人」なんかも見ていて、やはり女性が自分の人生を自由に選択できるようになるまでの歴史の長さ、重さを感じていたりもした。ウィンターボトムは男性だけど、この人は男女問わず情念を表現するのが上手い人だ。厳しい現実に抗いながらギリギリの希望を掴み取る人を真っ直ぐに見つめられる人だ。
「エンジェル・アット・マイ・テーブル」は辛い場面も少なくないけど、それでも女の子が自立して自分の世界を歩くようになるまでの過程を丁寧に描いていた。ニュージーランド出身であるカンピオンの「らしさ」が一番出ているのは、実はこの作品かもしれない。それ以前の作品は未見だけど、ピアノレッスン以降の作品が、やや「大作路線」に移行していったことを考えると、カンピオンの本分は実は「エンジェル」あたりにあるのではないだろうか。
「女性の自立」のその意味を20代の頃の僕は全く理解出来ていなかったけど、結婚して、離婚して、結婚して、娘たちが生まれて、50に手が届く年になって、改めて見てみると随分感じ方も違うのだろうと思う。カンピオン作品を今、見返すのなら「エンジェル・アット・マイ・テーブル」を選びたい。
娘たちには自分の好きなものを見つけて、自分の世界を育てて、自分の人生を歩いて欲しいと思う。