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場末の小料理屋での思わぬ再会。慎ましくも、そこにしっかり根をおろし、日常を築き上げていた男。自分の無力さと失ったものの重さと、犯した過ちや悔いと、そんなものが突き上げてきて涙が止まらなくなる。しっかりと涙を流せる男の強さを初めて彼が知るその瞬間。
何と言ってもあのラストシーンに尽きます。飛び抜けてあのラストシーンが良い!さすが「泣きの妻夫木」の面目躍如といったところでしょうか。

夢や理想ばかりでなく、泥水を飲むような挫折や妥協を経験して、自分のズルさ、無力さを思い知ったその先にこそ本当の強さがある。
思えば沢田が思い切り軽蔑していたあがた森魚演じる「骨抜きジャーナル」を象徴するベテラン記者の言葉にこそ真理があったのでした。
「1ヶ月間の放浪記事。あれは良かったねぇ。落ち着いたらまたああいうのやろうよ。」
梅山に思わずカンパをしてしまったという彼には多分最初から若い彼らの本当の価値や、彼らが見ることの出来ない風景が見えていたのでしょう。

でも、それでも・・・
昔の若者は今よりもずっと純粋で、もっと高邁な理想に向かって進んでいた、などという気は勿論ないのですが、それでもいつの世も若者は変わらず、本当の目的や意味など見つからなかったとしても、カッコつけて生きて、いきがって、暴走して、後戻りできなくなって、傷ついて、裏切って、そういうものなのだとは思うのです。
そしてそれが「見せかけ」であったとしても、ただ一晩を共にして、酒を飲み歌い明かした、ただそれだけで一生の友だと思えるようなそんな夜もあったと思うのです。昔だって、今だって。
彼が流した涙の中にはそういうものも勿論含まれていたに違いありません。

さすがに青木崇高には気がつかなかったのですが、前出のあがたさんの他に、あの手の役をやらせたら天下一品の長塚圭史とか、それから三浦友和さんも利いてました。
ではありますが、僕の一番の驚きは忽那汐里!
「ちょんまげぷりん」からたったの1年で、これほど大人になって、少女の透明感と、大人の女性の意志の強さの両方を絶妙なバランスで体現できる女優さんになっているとは思いもしませんでした。
今後のキャリアがとても楽しみになりました。

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