イン・ディス・ワールド

決死の脱出行の合間に見えてくる、剥き出しの自然に僕は一番心を奪われました。ゴツゴツした荒野や、見渡す限りの砂漠や、厳しい吹雪や・・・。
16歳にしては、やや華奢に見える体格と16歳にしてはやけに大人びて見える表情の両方にその境遇を強烈に感じさせる少年。少年の目には、あの風景がキチンと見えていたのでしょうか?映画の中には彼が行く先々の、そうした自然に心を動かされるシーンが出てきます。でも、本当は彼の周りにはもっともっと沢山の美しい光景が広がっていた筈。酸欠で命を落としかけ、コンテナから飛び出し、走って逃げる彼の傍らには綺麗な海が広がっていたに違いありません。
極限状態の中で、彼が見る事の出来なかった風景、極限状態だからこそ彼が触れることの出来た自然の美しさ。その両方にドラマとドキュメンタリーの枠を越えたリアリティを感じました。

ウィンターボトムの新作の噂を聞いたとき、僕は以前の彼の作品「ウェルカム・トゥ・サラエボ」の事を思い浮かべました。主人公が辿る結末という点など似ている所が多いのではないかと思っていたのです。
確かに似ているところもあるにはあったのですが、そこはさすがにウィンターボトム、やはり全く違った懐の深さを見せてくれていました。
03/12/07(日) 10:42

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