ガールフレンド・エクスペリエンス

地球の裏側の全く縁がない世界の映画の筈なのに、いつか自分がつぶやいた言葉や、どこかで聞いたことのある台詞が頭の中をぐるぐる回って、上手に距離を保つことが出来ませんでした。

これはシステムを利用する人間の話でもあり、システムに奉仕させられる人間の話でもあります。
際限のない欲望によって動くシステムは、彼女によりいっそうの奉仕を求める。したたかにそれを利用していたはずの彼女の本当の願い、チラッとだけ見える彼女の本当の願いが驚くほどにちっぽけで、それに対峙する時の彼女がひどく幼稚であるということが僕にはとてもリアルでした。幼稚な欲望の持ち主こそ、資本主義というシステムの中では怪物になり得る。
「マイレージ・マイライフ」では、皆が好きになれた。この映画は基本的には同じテーマを、あの映画とは別の洗練されたスタイルで表現しています。でもどうしても彼らを認めたくない。彼らを認めてしまった瞬間に、こちら側の何かが浸食されてしまいそうな居心地の悪さがあるから。

居心地の悪さを埋めるために、これだけは言っておきたい。的外れで、無粋だって分かっているけど。

自分への投資を惜しまず、教養を身につけ、そんな自分に相応しい男とだけ夜を共にする。それは彼女にとってはプライドなのかもしれません。でも、僕には全く違うものにも思えます。プライドは付き合う相手によって決まるものではなく、どこまでも自分の内側にあるものです。金持ちや、優れた能力の持ち主と付き合ったからといって、高められる自分の価値なんていうのはたかが知れています。
それだけはどうしても彼女には言いたい。
彼女自身が素っ裸の自分に向かい合った時に初めて彼女自身のプライドがどこにあるのかが見えてくる。彼女だけでなく、この映画の登場人物全てが。簡単じゃないってよく分かる。とてもよく分かる。
でもそれだけは言っておきたいのです。
2010年7月18日

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