白も黒も

何かを好きになったときに、必ずしもそれと正反対のものを嫌いになる必要はない。

いつもそう振舞えるわけではないのだけど、出来ることなら自分が大好きなものとは正反対の何かをこよなく愛する人と、お互いの思いを存分に語り合った後に意気投合したいと思っている。

何かを思い切り持ち上げるときに、それとは正反対の何かを徹底的に貶す。それは分かりやすいんだけど、分かりやす過ぎるものには何か危うさや居心地の悪さみたいなものを感じてしまう。マスコミとかネット上のお手軽映画レビューとか。
傾向としては、分かりやすく賛同が得られやすいポジティブな作品に対して、その反対の作品が槍玉にあがることが多い。でも誰でもが品行方正であるわけもなく、全ての選択が成功や栄光に繋がるわけでもなく、大半の人物はもっと屈折した道を歩み、スポットライトの当たらない役回りを演じているわけで・・・。空元気や作り笑いの裏でドロドロしたものを抱えながら日々を生きている僕らは、だからこそ、冴えない主人公に共感もするし、その正反対の王道ヒーローに胸を躍らせもする。それでいい。

自分を好きになっても好きになれなくても、自分や自分と正反対の誰かを嫌いになる必要はないと思う。

脛に傷持つ全ての人物に等しくスポットライトを当て、その全てを決して上から見下ろすのではなく、同じ地平で優しく肩をたたいてあげることのできる作品が僕は好きだ。楊徳昌、キェシロフスキ・・・。
自分にも、自分の好きなものにも、いつも同じ方向から光が当たっているわけではないのだから。光があれば影もある。そのどちらかを必ず嫌いになったりしなくていい。

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