カップルズ

妙に日当たりのいい部屋、広く、奇麗に片付き、趣味のいい家具が少し少なめに配置されている。

そんな部屋が一杯出てきます。どれもいい部屋ばかりなんですが、どうも見ていて落ち着きません。それどころか何か狂った異常な空間を見ているようでドキドキしてしまいました。

この映画に登場する人物たちの心情もそんな感じです。ほしい物は何でも手に入れ、何もかも上手く行っているように見えて、実はそれは非常に脆いもので、偽りに満ちていて、結局自分の望むものを何も手にしていない。そもそも自分が何を求めているのかも分からない。そういう若者たちがこの映画の主人公です。

不良グループのリーダー、レッドフィッシュは父に迫ります。「生きていくことは?」「ほしい物は?」「金儲けのため?」「女のため?」。その時は何も語りませんが、恋人(決して愛人ではなく)と手を取り合って部屋に横たわり、最期にその答えを無言で息子に語ります。

この二人はそういう形でしか自分たちの望みを叶えることが出来なかったわけですが、ラストシーンのもう一組のカップルは少なくとも「自分たちが何を望んでいるのか?」と言う答えを見つけることは出来たようです。二人の長いキス、決して「不吉なことの前触れ」ではないようです。

ごみごみした狭い下宿屋、ダウンタウンの市場。人間が人間らしい幸せを手に入れるのにはやはりこういう場所の方が相応しいような気がします。
97/01/17(金) 01:39

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