ブレッド&ローズ

ふと、掃除をする手を止めて、向かい側のビルに目をやり、同じように作業をしている“戦友”に手を振るマヤ。「大地と自由」のワンシーンを思い出しました。スペイン内戦、敵味方に別れて闘っている兵士同士が闇の中、お互いの出身地を語り合う。その直後、両者はまた戦い始め、撃ち合う事になるのでした。マヤと向かい側のビルの作業員は敵同士ではありません。でも同じように「大地と自由」の二人の兵士も決して敵同士ではなかったのでしょう。ケン・ローチにとって敵同士というのは「戦う人と戦わない人」の関係であって、「戦う人と戦う人」の間には「誰も敗者とならぬ戦い」しか存在しないのだから。

彼は怒りに似た信念を持った人ですが、それは特定の主義主張に対しての反抗ではなくて、武器を持って戦う事を避け、見て見ぬ振りをして自分の安全だけを守ろうとする人に対してのものです。
その一方で、誰を信じていいか分からない、どこに希望があるのか分らない、そういう厳しい現実を描く事が出来るのは本当に人間の可能性や希望を信じる事の出来る人間以外にないと思います。彼こそはそういう人物だと。

マヤとローズが泣きながら本音をぶつけ合う。彼の映画には必ず、映画を超えて“真実”が立ち現われる瞬間があります。

マヤがやって来た時には、車で連れ去られる彼女を呆然と立ち尽くして見ることしか出来なかったローズですが、別れの日には必死でバスに乗った彼女を、彼女にさよならを言おうと追いかけるのでした。
02/10/27(日) 16:47

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